デザインの印象を大きく変える要素のひとつにフォントがあります。「どのデザインにどのフォントを選ぶか」がデザイナーの見せどころですが、フォントの種類がたくさんありすぎて迷ってしまうという方も多いかと思います。
なので、まずは世界中のデザイナー・クリエイターから選ばれているド定番の【セリフ体】を知っておくと良いかと思います。
【サンセリフ体】についてはこちらでご紹介しているので、合わせて参考くださいね。
デザイナーならまずは覚えておきたいド定番のサンセリフ体の欧文フォント!まずは覚えておきたいド定番のセリフ体の欧文フォント
本記事で紹介しているフォントを実際にデザインで使用してみることで、フォントごとの癖や特徴などの理解が深まります。
パソコンのOSによっては、本記事で紹介しているフォントがデフォルトでインストールされている場合があります。
インストールされていないフォントは、有料で販売されていたり、Adobe Fontsからアクティベートできるフォントもあるので、合わせてリンク先を掲載しておきます。本記事で紹介しているすべてのフォントを利用できないかもしれませんが、フォント名だけでも覚えておいて損はないはずです。
「セリフ体」と「サンセリフ体」の違いとは
欧文フォントは大きく分けると「セリフ体」と「サンセリフ体」の2つに分かれます。大きな違いとしては、文字の先端にある『ウロコ』と呼ばれる飾りの有無です。
「セリフ体」にはウロコがあり、「サンセリフ体」にはウロコがありません。
和文フォント(日本語フォント)でいうところの「セリフ体が明朝体」、「サンセリフ体がゴシック体」に近いイメージです。
今回、紹介するのはウロコがある「セリフ体」の定番フォントをご紹介していきます!
定番の「セリフ体」フォントの紹介とあわせて、そのフォントを使用しているサービスロゴやブランドロゴの事例も紹介しています。
ただしフォントをそのまま使用しているだけではなく、ベースフォントとして使用し、ロゴのデザイナーが調整して作られています。そのため、掲載しているロゴはベースフォントとして使っているのではないかという事例紹介になりますので事前にご了承ください!
Garamond(ギャラモン/ガラモン)
Garamond(ギャラモン/ガラモン)は、16世紀のフランスのタイプフェイスデザイナー Claude Garamond(クロード・ガラモン氏)によってデザインされました書体です。
特徴としては、読みやすく、美しくバランスのよい字体があげられます。また、文字の太さが均等であり、筆記体も美しいと評判です。人気が非常に高いフォントで、書籍や雑誌などの印刷物でよく使用されているのをよく見かけます。
オリジナルのGaramondに対して改良や拡張が施されたAdobe Garamond、 Garamond Premier Proなどがあります。
「Adobe Garamond」はAdobe Fontsから使用できます
Times New Roman(タイムズ・ニュー・ローマン)
Times New Roman(タイムズ・ニュー・ローマン)は、1932年にイギリスのタイムズ紙が新聞用書体として開発したセリフ体書体です。
新聞用書体として開発された為、可読性に優れており、小さい文字サイズでも読みやすいように配慮されています。論文や文献等でよく使用されているフォントで、デザインでも見出しから本文と幅広く使われています。
Caslon(キャスロン・カスロン)
Caslon(キャスロン・カスロン)は、18世紀にイギリスのWilliam Caslon(ウィリアム・カスロン氏)が製作したフォントです。アメリカの独立宣言書に使われた活字としても有名です。
今から300年前に制作されているとは思わないぐらい本当に美しく完成されている書体です。昔から「セリフ体で迷ったらCaslonで組め」と言われたほど応用範囲の広い書体です。
Caslonも派生が多く存在していますが、使うならまずはAdobe Caslonが良いかと思います。
「Adobe Caslon」はAdobe Fontsから使用できます
Trajan(トレイジャン)
Trajan(トレイジャン)は、約2,000年前にローマ建てられた「トラヤヌス帝の碑文」と呼ばれる石碑が元になっています。タイポグラフィの歴史を扱う専門書のほとんどが「すべてのローマン(セリフ体)・アルファベットの永遠の源」と言われており、ローマン(セリフ体)書体の祖ですよ!祖!
2,000前だとまだアルファベットの小文字がなかったため、Trajanにも小文字が収録されておりません。
優雅で高級感、歴史を感じさせる印象なので、高級車ジャガーや映画タイタニックなどのロゴに使用されていました。日本だとSMBC(三井住友銀行)に使用されていますね。
「Trajan Pro」をAdobeFontsから使用することができます。
Didot(ディド)
Didot(ディド)は、18世紀にフランスのFirmin Didot(フェルミン・ディド氏)によって制作された活字を元に作られた書体です。
セリフが細く直線的で、ストロークの太くなっていることで縦と横のコントラストが特徴的です。
品がある女性的・高級感を感じるため、ファッション・メイク・美容の関連のブランドや雑誌でよく使用されています。
「Linotype Didot」をAdobeFontsから使用することができます。
Bodoni(ボドニ)
Bodoni(ボドニ)は、18世紀のイタリアのGiambattista Bodoni(ジャンバティスタ・ボドニ氏)によって制作された活字を元に作られた書体です。
上記で紹介しているDidotとパッと見の印象は少し似ているかもしれませんが、縦方向のストロークがBodoniの方が太いため、より力強い印象があり、クセが強いように感じます。
ファッション・メイク・美容の関連のデザインで使用されているのをみかけるので、人気フォントの1つです。
「Bodoni URW」をAdobeFontsから使用することができます。
Rocwell(ロックウェル)
Rocwell(ロックウェル)は、1933年にFrank Hinman Pierpont(フランク・ヒンマン・ピアポント氏)によって制作された書体です。
従来のセリフ体よりサンセリフ体のように、ストロークがほぼすべて同じ太さになっているのが特徴で、ジオメトリック・スラブセリフ(幾何学的なスラブセリフ)とも言われています。
「Rockwell Nova」をAdobeFontsから使用することができます。
Minion(ミニオン)
Minion(ミニオン)は、Robert Slimbach(ロバート・スリンバック)によって設計され、Adobe Systemsによって1990年にリリース書体です。
本体テキスト用に設計されているので、判読性を高めるために大きな開口部が特徴です。良い意味でクセが少なく使いやすいフォントです。
「Minion」をAdobeFontsから使用することができます。
Sabon(サボン)
Sabon(サボン)は、1964年にJan Tschichold(ヤン・チヒョルト氏)によって制作された書体です。
Garamondを参考に作られてたと言われています。
Garamondより柔らかい雰囲気を残しつもストロークの形状がシャープに整えられているため、知的で品の良い印象があります。
「Sabon」をAdobeFontsから使用することができます。
Palatino(パラティノ)
Palatino(パラティノ)は、1950年にドイツのHermann Zapf(ヘルマン・ツァップ氏)によって制作された書体です。
パッと見ではベーシックなセリフ体の印象がありますが、上記の「P」「a」「t」「n」など見るとストロークの末尾や先端の細部の処理が、独特の雰囲気を持っているフォントです。
Baskerville(バスカヴィル)
Baskerville(バスカヴィル)は、1750年代にイギリスのJohn Baskerville(ジョン・バスカヴィル氏)によって制作された活字をもとに作られた書体です。
トランジショナルセリフと呼ばれる書体群の代表的書体で、伝統的な書体です。セリフがしっかりしており、大文字のフォルムも大きくどっしりとしているところから厳粛な印象が感じられます。
「Baskerville URW」をAdobeFontsから使用することができます。
Copperplate(カッパープレート)
Copperplate(カッパープレート)は、1901年にアメリカのATF社(American Type Founders)がFrederic W. Goudy(フレデリック・ガウディ氏)によって制作された活字を元に作られた書体です。
一般的なフォントと比べて横に長く作られており、正方形に近いフォルムが特徴です。
高級感や厳格な印象感じれるため、ホテル・高級レストラン・ブライダルなどのジャンルのデザインに使用されているのをよく見かけます。日本でもとっても人気フォントの1つです。
フォント名からデザインに取り入れた事例を調べるなら
「フォント名 + usage」 Googleで画像検索するとそのフォントを使用しているデザイン事例やロゴがたくさんでてくるので、フォントが『どんなジャンルで使用されているのか』『どんな印象を与えているのか』など調べたい時に覚えておくと便利な検索キーワードです!
漫画でフォントを学ぶなら「となりのヘルベチカ」
書体知識ゼロで悩む彼女の前に、擬人化された「ヘルベチカ」が現れ、彼女を書体の世界へと案内します。自分を「落ち着いてて信頼感があるって評価されている」と紹介するヘルベチカ。丸栖に「サンセリフ」の意味や、自分の関わった仕事などを教えてくれます。
本記事でも紹介した有名な欧文フォントを擬人化させて、フォントの特徴や成り立ちを漫画で紹介してくれる。文字ばかりの本ではなく、漫画としてフォントを学ぶことができるので、フォント入門書としてはとってもオススメです!
となりのヘルベチカ- kindleセリフフォントをもっと学びたいなら小林章さんの書籍がオススメ
フォントをもっと学びたい方はフォントデザイナーの「小林章さん」が著書の書籍がオススメです。
上記に挙げた『セリフフォントの歴史や背景』から『目的に応じてどのようなフォントを使用すれば良いか』などを細かく解説されています。フォントを選ぶ知識をしっかりと得ることができる書籍だと思います。
複数本、出版されていますが個人的にオススメしたい本は、以下の3冊です。